編集長コメント (2023年8月28日発行、第55号に寄せて)

今号の医薬研発達人では、2023年6-7月にCDEからfinal版が発出された2つのガイドラインについて取り上げるが、本文に先立ち、以下にて、私の解釈等を補足したい。

1. 「新药获益-风险评估技」「新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン」 (2023年6月25日CDE発出、2023年第36号)

2021年7月2日にCDEが「公开征求《以床价值为导向的抗床研》意的通知」「臨床的価値に基づく抗悪性腫瘍薬の臨床開発ガイドライン(案)についてのパブコメ」を発出し、「抗がん剤の無作為化比較試験の対照群は、標準治療(Standard of Care, SoC)を用いるべき」、「最善の支持療法(Best Supportive Care,BSC)がある場合には、対照群としてプラセボ(単独)ではなく、BSCを選択すべき」と明記したことは、当時の中国の製薬業界に大きな衝撃をもたらし、それ以降、各製薬企業は「自社被験薬の有効性を確実に示すために、抗がん剤の無作為化比較試験の対照群として、もはや時代遅れとなっている一昔前の治療薬/治療法を用いる」ということができなくなった [医薬研発達人第10号(2021年11月8日発行)「CDEが抗悪性腫瘍薬の臨床開発ガイドライン(案)を発出」参照]。

その後、このガイドライン(案)のfinal版は、2021年11月19日にCDEから「以临床价值为导向的抗肿瘤药物临床研发指导原则」臨床的価値に基づく抗悪性腫瘍薬の臨床開発ガイドライン(2021年第46号) として発行され、現在もvalidである [医薬研発達人第30号(2022年8月29日発行)「中国における抗悪性腫瘍薬併用療法の開発トレンド」参照]。

すなわち、抗がん剤のPhase 3試験の対照群選択に関する考え方は、上記の記載が今日も生きている。

一方、抗がん剤以外を含む新薬の無作為化比較試験の陽性対照群選択に関する考え方は、2022年11月8日にCDEから発出された「关于公开征求《新药获益-风险评估技》意的通知」「新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン(案)についてのパブコメ」に記載され、そのfinal版は2023年6月25日に「药获益-风险评估技「新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン」 (2023年第36号) としてCDEから発出されたが、陽性対照群選択については、「陽性対照を使用する場合、その(対照群となる)薬剤が既承認済の代替療法と比較して許容できないベネフィット・リスクを有していないこと、あるいはその薬剤が既存の治療法と比較してより有効であることを確認する必要がある」と、(案)の記載から変更されることなく、(案)と同じ文面のまま最終化された。

さらに、この「新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン」 (2023年第36号) (パブコメ版draftも同様)では、各ステージでのCDEとの密なコミュニケーションの維持、とりわけEnd of Phase 2ステージの重要性が強調された。

このことは、「NDA申請に適切でない and/or 参加する被験者に不利益が及ぶような適切でない、Phase 3試験のデザインや対照薬が選ばれることのないよう計画段階で未然に防ぐ」というCDEの強い意思の表れだろう、と私は考えている。

2. 「《以患者中心的试验设计行)》 《以患者中心的试验实施技行)》 《以患者中心的益-风险评估技行)》」「《患者を中心とする医薬品臨床試験のデザインに関する技術ガイドライン(試行)》 《患者を中心とする医薬品臨床試験の実施に関する技術ガイドライン(試行)》 《患者を中心とする医薬品のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン(試行)》」 (2023年7月27日CDE発出、2023年第44号)

まず、中国におけるDecentralized Clinical Trials, DCTの現状については、医薬研発達人第34号(2022年10月24日発行)「DIA AsiaとDIA日本年会を通じて得られた中国に関する知見」の本文と医薬研発達人第40号(2023年1月16日発行)「中国は『患者を中心とする』新薬臨床開発の時代を開く」の編集長コメントでも述べているので、これらバックナンバーをご参照いただきたい。

2023年7月27日にCDEから発出された「患者を中心とする3つの技術ガイドライン」 (2023年第44号) は、患者中心の医薬品の臨床開発・臨床試験を一層推し進めようとするCDEの不退転の決意が示されたものと捉えている。「患者中心」というCDEの一貫した姿勢が、3つの技術ガイドラインのあらゆる箇所にちりばめられている。

なかでも、「以患者中心的试验实施技行)」「患者を中心とする医薬品臨床試験の実施に関する技術ガイドライン(試行)」は、中国のDCTガイドラインそのものであり、オンライン被験者募集、eConsent、遠隔診療、治験薬の被験者への直送、近医での診療・検査等々、現行GCP下で考えられる、治験依頼者やinvestigatorsらが知恵を絞って達成すべき「患者中心」のDCT治験推進に向けてのアイデアが沢山載っている。

その書きっぷりは、今年5月に米国FDAから発出されたDraft Guidance “Decentralized Clinical Trials for Drugs, Biological Products, and Devicesと比べて、よりaggressiveであり、まるで治験依頼者やinvestigatorsらに対してDCT治験を一層推進するようプレッシャーをかけているかのようにさえ映る。

医薬研発達人第48号(2023年5月8日発行)「中国において抗悪性腫瘍薬の単群試験が適となる6つのケース」の編集長コメントでも述べたが、中国CDEの技術ガイドライン発出は、近年、とても早く、広く、そして中身は具体的かつ果敢で、随所にCDEの強い決意を感じる。 

NMPA/CDEは、医薬品を管轄する規制当局として、ここ10-15年の間に爆発的に生まれた新興のbiotech/biopharmaを適切に導くためにも、「たとえ時間がかかっても十分に議論して結論が出てから動く」ではなく、「ICHや米欧日当局や産業界・アカデミア動向を注視しつつ、常に動きながら考え、できるだけ速やかにかつ自らの意思を込めて各ガイダンスを発出し、leadershipを発揮する。そして、もし是正が必要なら後から都度flexibleに対応する」というスピード感とcommitmentと各stakeholderとのwin-winの姿勢を併せ持っている、と考えている。

⾼野 哲⾂(Fortrea Japan)(Labcorp Development Japanの臨床開発部⾨は2023.5.1付でFortrea Japanに社名変更いたしました)


文|毛冬蕾(Mao,Donglei)


国家医薬品監督管理局医薬品審査センター(
Center for Drug Evaluation, CDE)が20236月25日に発行した『新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン』(2023年第36号(以下、ガイドラインという)では、新薬のベネフィット•リスク評価とは、患者にとっての薬剤のベネフィットとリスクの特性に応じて、予定される適応症に対してその期待されるベネフィットがリスクよりも大きいかどうかを判定し、意思決定を行うプロセスであると記載されている。

ベネフィット•リスク評価は常に医薬品のライフサイクル全体を通じて行われ、医薬品の臨床開発、製造販売承認申請及び市販後の規制上の意思決定において重要な考慮要素となり、企業は、臨床医薬品研究開発における医薬品研究開発の指針となるベネフィット•リスク評価計画を策定する必要がある。

米国FDAの元上級審査員で3D Medicines の最高医療責任者である肖申Xiao, Shen博士は、ガイドラインは新薬の臨床開発、審査プロセスに関するCDEの科学的考え方を反映しており、差別化された臨床試験の設計、患者の実際のニーズを満たす上で非常に重要な指導的意義があるとコメントした。この新ガイドラインの発行により、中国の新薬審査決定の予測可能性、一貫性、透明性、明確性が向上し、規制上の意思決定におけるベネフィット•リスクの評価プロセスが反映され、最終的には医薬品を承認するための科学的な決定が下されることになる。

ベネフィット•リスクは、各国の規制当局が審査を行う際の主な考慮事項である

 

2012年に米国FDAベネフィット•リスクに関する最初のガイドラインを発行して以来、世界各国でベネフィット•リスクに関する技術ガイドラインの策定が行われてきており、その変遷には長い歴史があ(下参照)。中国ではCDEがこの分野へ着手するのが遅れていたが、中国の審査機関は近年医薬品の評価プロセスにおけるベネフィットとリスクのバランスへの関心を徐々に高めており、今回発行された新ガイドラインは大きな前進であると言える。この新ガイドラインは、医薬品の臨床研究開発におけるベネフィット•リスク評価の方法を標準化し、企業参考できるガイダンスを提供する。


近年、多くの中国の創新薬企業は新たな市場を開拓するためにASEAN諸国に進出している。しかし、欧米などの先進国で(進出した)研究開発型企業が主導するのとは異なり、主に中国の投資家と医薬品代理企業(Contract Sales Organization, CSOあるいはDistributor)が協同で主体となってASEANの市場に進出するケースが多い。

各国の規制当局がベネフィット•リスクに関するガイドラインを発行

発行日

関連機関と内容

2012年3月28

FDA CDRHより発表されたベネフィット•リスクの分析に関する規制ガイドライン

Factors to Consider When Making Benefit-Risk Determination in Medical Device Premarket Approval and De Novo Classifications

2013年2月

PDUFA Vにおいて、FDAベネフィット•リスク分析フレームワークの導入

Structured Approach to Benefit-Risk Assessment in Drug Regulatory Decision-Making

Draft PDUFA V Implementation Plan

2016年6月15日

ICH提出された臨床データの概括評価に構造化されたメリット•リスク分析を導入

Revision of M4E Guideline on Enhancing the format and structure of benefit-risk information in ICH

2019

医薬品のベネフィット•リスク分析に関するCIOMS XIIワーキンググループの設立

2020331日

EMAが『レギュラトリーサイエンス2025計画:戦略的思考』を発行

Draft EMA Regulatory Science to 2025 Strategic reflection

2021年9月29日

FDA CDER/CBER がベネフィット•リスク分析ガイドラインを発行

Benefit-Risk Assessment for New Drug and Biological Products

2023年6月25

CDEが『新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン』を発行

国家药监局药审中心关于发布《新药获益-风险评估技术指导原则》的通告(2023年第36号)

【2022118日CDE発行のパブコメdraftを経たfinal版】

医薬研発達人にて第4回生物統計サミットでの狄佳寧Di, Jianing博士の講演スライドより抜粋ならびに

実際、ベネフィットとリスクの評価基準は、規制当局によって異なる場合がある。ジョンソン•エンド•ジョンソン(Johnson & Johnson)傘下の西安楊森製薬Xian Janssen中国 R&D センターの代理責任者である狄佳寧Di, Jianing博士はDexience(ベトリキサバン、静脈血栓塞栓症予防)が2017年6月にFDAによって承認された一方、同じデータに基づく製造販売承認申請が2018年3月にEMAによって拒否されたという例を挙げた。主な理由は、治療群における出血の有害事象によりベネフィットがリスクを上回る規制当局EMAが判断できなかったことである。「したがって、ベネフィットとリスクのバランスは医薬品規制当局による新薬承認の重要な基準であるが、同時に科学的データと主観的評価の組み合わせにより、潜在的な差異が存在する」と彼は述べた。

肖申博士によると、「米国FDAでは、異なる治療分野の異なる患者グループ、異なる臨床有効性エンドポイント、及び異なる医薬品の安全性プロファイルについて詳細かつ慎重に具体的な分析と評価われる」という。また、必要に応じて外部専門家の支援や指導に頼る場合もある。これ異なる治療分野における17のFDA顧問委員会存在する重要な理由でもある。これら委員会の主な責の1つは、疾患の専門的見地から医薬品のベネフィットとリスクを評価し、規制当局を支援することである。そしてその評価は動的に変化するものである。

医薬品のベネフィットとリスクの評価における留意事項


今回
、ベネフィット•リスク評価の概念、全体的な考慮事項、製造販売承認申請におけるベネフィット•リスク評価、臨床研究開発におけるベネフィット•リスク評価計画、及び他の留意事項に焦点を当ながらCDEの新ガイドライン紹介する。

新ガイドラインでは、医薬品のベネフィットとリスクの評価は、有効性と安全性のデータを直接比較するだけでは結論が得られないことが多いとされている。したがって、明確に構造化されたベネフィット•リスク評価フレームワーク及び計画を策定し、ベネフィット•リスク評価におけるさまざまな重要な問題、対応する証拠、不確実性に関する情報を提供することが重要である。

具体的には、ベネフィット•リスク評価の全体的な留意事項には、主に次の5つの側面が含まれる。

まず、新薬のベネフィット•リスク評価は、その医薬品に臨床的に意味のあるベネフィットがあり、その安全性プロファイルが良好で、重大な安全性リスクが認められない場合、より直接かつ明確になる。新薬が生命を脅かすリスクや副作用や有害事象の発生率が高いなど、新薬に重篤な安全性リスクが特定されている、または潜在的に重篤な安全性リスクがある場合、ベネフィット•リスク評価は非常に困難になる。

第二に、適応症は、治療選択肢のない適応症に対して新薬が申請される場合や、新薬が既存の治療法に比べて大きな利点がある場合など、医薬品のベネフィットが重大なリスクを上回るかどうかを評価する上で重要な情報であり、患者はより大きなリスクを受け入れられる可能性がある。

第三に、企業の製造販売承認申請によって提出された証拠は、医薬品のベネフィットとリスクの評価を裏付ける情報として使用できる。主な情報源には、非臨床データ、臨床データ、患者体験データ、疫学データなどが含まれる。

第四に、医薬品のベネフィットとリスクの不確実性は、適切な臨床試験の設計と実施を通じて軽減される必要がある。不確実性については、CDEは総合的に考慮し、医薬品のベネフィットがリスクを上回るかどうか、さらなる対処が必要かどうかを科学的に評価する。 

最後に、患者体験データを収集することは、満たされていない患者ニーズを特定するのに役立つ。患者体験データに関しては、CDEは最近、医薬品のベネフィット•リスクに対する患者の好みを反映する患者中心の臨床試験に関する一連の技術ガイドラインを発行した。

CDEは近年、多数の「患者中心」のガイドラインを発行してきた

発行日

ガイドライン名など

2021年11月19

『臨床的価値に基づく悪性腫瘍薬臨床開発ガイドライン』(2021年第46号)

《以临床价值为导向的抗肿瘤药物临床研发指导原则》(2021年第46号)

【医薬研発達人第30号(2022年8月29日発行)から再掲

2022年1月4日

『患者報告アウトカムの医薬品臨床開発における応用に関するガイドライン(試行)』(2021年第62号)

《患者报告结局在药物临床研发中应用的指导原则(试行)》的通告(2021年第62号)

【医薬研発達人第40号(2023116日発行)から再掲】

2022年11月25日

『医薬品開発における患者参加を組織するための一般的な考慮事項に関するガイドライン(試行)』(2022年第46号)

《组织患者参与药物研发的一般考虑指导原则(试行)》的通告(2022年第46号)

【医薬研発達人第40号(2023年1月16日発行)から再掲】

2023年7月27日

『患者を中心とする医薬品臨床試験デザインに関する技術ガイドライン』(試行)

《以患者为中心的临床试验设计技术指导原则》(试行)2023年第44号)

202289CDE発行のパブコメdraftを経たfinal版。医薬研発達人第34号(2022年1024日発行)参照

2023年7月27日

『患者を中心とする医薬品臨床試験実施に関する技術ガイドライン』(試行)

《以患者为中心的临床试验实施技术指导原则》(试行)2023年第44号)

【202289日CDE発行のパブコメdraftを経たfinal版。医薬研発達人第34号(2022年10月24日発行)参照】

2023年727日

『患者中心とする医薬品ベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン(試行)』

《以患者为中心的药物获益-风险评估技术指导原则》(试行)(2023年第44号)

【202289日CDE発行のパブコメdraftを経たfinal版。医薬研発達人第34号(2022年10月24日発行)参照】

医薬研発達人にてCDE websiteより抜粋

狄佳寧博士は、今回CDEが発行した新ガイドラインは医薬品研究開発におけるベネフィット•リスク評価に明確なフレームワークとロジックを提供したと考えている。同時に、実際の医薬品開発と評価における判断に関して多くの場合「黒か白か」、「正しいか間違っているか」ではなく、いくつかの重要な原則を把握しながら、患者の好みと体験を全面的に検討する必要がある。医薬品のベネフィット•リスクのバランスは、客観的評価と主観的評価の組み合わせであり、母集団の結論に基づく一連の基準であり、既存の治療手段に対する薬物の相対的な特徴を反映する必要がある。

ベネフィット•リスク評価フレームワークとはなにか?


CDEの新ガイドラインでは、新薬の製造販売承認申請
の審査段階において、ベネフィット•リスク評価の段階的プロセスが記載された「ベネフィット•リスク評価フレームワークに沿ったコミュニケーションと評価が行われることが推奨されている。「このフレームワークにより、同じ客観的な証拠と潜在的に異なる主観的な視点を、同じシステムプラットフォームで検討•評価できるようになり、ベネフィット•リスク評価がより科学的かつ論理的になる。」と狄佳寧博士は述べ。図に示すように、ベネフィット•リスク評価フレームワークには、ベネフィット•リスク評価における重要な考慮事項、裏付けとなる証拠、及び不確実性が含まれている。

『新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン』2023年第36号)におけるベネフィット•リスク評価フレームワーク

治療の背景

治療対象となる疾患の背景、既存の治療選択肢、及びその裏付けとなる証拠、不確実性及び結論

ベネフィット

対象集団に対する有意義な影響と、その裏付けとなる証拠、不確実性及び結論

リスク及びリスク管理

薬物関連の有害事象及び他の悪影響と裏付けとなる証拠、リスクへの対応策、不確実性及び結論

ベネフィット•リスクの結論

現在の治療背景における医薬品のベネフィットとリスクの裏付けとなる証拠及び不確実性、リスク管理計画、規制上の意思決定を裏付ける理由を要約する

医薬研発達人にてCDEの「新薬のベネフィット•リスク評価に関する技術ガイドライン」2023年第36号)より抜粋

定性的アプローチとして、ベネフィット•リスク評価フレームワークには、ベネフィット•リスク評価における重要な考慮事項、裏付けとなる証拠、不確実性が含まれており、規制当局と企業の両方に非常に明確な指針を提供している。また、新ガイドラインでは、医薬品が複数の適応症について申請されている場合、申請されている各適応症と併せて個別にベネフィット•リスク評価を行う必要があると推奨している。

企業によるベネフィット•リスク評価計画の事前策定


CDEの新ガイドラインでは、
企業が策定するベネフィット•リスク評価計画は、企業が研究開発の意思決定を行、規制当局と連絡を取り、また製造販売承認申請資料の一部として医薬品の製造販売承認申請を裏付ける証拠を提供するために使用されると記載されている。つまり、企業が申請資料として提出する臨床非臨床などのデータは、企業があらかじめ策定したベネフィット•リスク評価計画に基づいて生成されるべきであり、このベネフィット•リスク評価計画を注意深く策定することは、ひいては規制当局が望ましいベネフィットリスク評価を行うために極めて重要になってくる。

肖申博士は次のように提案した。ベネフィット•リスク評価計画をより適切に策定するために、企業の研究開発者は時代とともに進歩し、現在の臨床実践を十分に理解する必要がある。ベネフィット•リスク評価計画をできるだけ早く策定することは、臨床試験の設計と実施を効率化する上で重要である。研究開発者は、患者に対する医薬品のベネフィットを向上させるために、臨床エンドポイントの設計、エンドポイント指標の選択に注意を払う必要がある。

同時に、前臨床試験からの安全性データ、臨床試験における副作用に関連するすべてのデータを全面的に収集して、個体と集団のリスク間の割合と相関関係を判断する必要もある。新ガイドラインが示しているように、ヒストリカルコントロールデータ、疫学データ、同種同効品に関するデータ(もしあれば)等も考慮する必要がある。

患者の視点から見た臨床試験のベネフィット・リスク


国家医薬品監督管理局医薬品登録
司長(中国語:药品注册司司长)であり、現在は中国医薬品監督管理研究会長である張偉Zhang, Wei)氏は、医薬品規制当局にとって、新薬の臨床試験におけるベネフィットリスク評価を強化することは常に重要な課題であり、医薬品の倫理審査の主要な部分を占めていると考えている。ベネフィットリスク評価には、ベネフィット(利益)の分析とリスクの特定が含まれなければならず、臨床試験に参加する被験者の利益とリスクのバランスが合理的でなければならない。

被験者にとっての利益とは、治験を通じて病状や生活の質が改善されることを意味する。さらに、試験結果による医療技術の進歩や、より効果的または安全な治療法を患者に提供することが社会的利益となる。リスクには、臨床試験によって引き起こされる治験リスクと、臨床試験に参加しなくても負担するリスクである治療リスクに分類される。リスクレベルは一般に、最小リスク、低リスク、中リスク、高リスクの 4 つのレベルに分類され。臨床試験では被験者の安全を守るため、リスクに応じたリスク管理措置を講じる必要がある。

張偉氏によると、ベネフィッリスク評価は動的かつ複雑なプロセスであり、さまざまな段階に応じて試験の目的、デザイン、方法論、患者集団などを包括的に考慮する必要がある。従って、ベネフィットリスク評価についての理解と能力を向上させ、標準化された評価システムを確立し、高品質の臨床試験を保証するために、すべての関係者が協力する必要がある。今回の新ガイドラインはこのような目的を有しているわけである。

最後に、この新ガイドラインでは、申請者は臨床研究開発のすべての段階、特に第II相臨床試験終了後及び第III相臨床試験実施前に規制当局との緊密なコミュニケーションを維持する必要があり、コミュニケーションにおいてベネフィット•リスク評価を非常に重要視し、CDEが最も賢明な意思決定と判断を下せるよう支援する必要があると述べている。この新ガイドラインの発行、中国での医薬品開発におけるベネフィットリスク評価についてより明確な指針として活用されるよう期待したい

謝 辞:

日本語訳と編集、レビューをいただいた北京恒創精成医薬科技株式会社社長郁 亮(Yu,Liang) 氏、医薬品開発コンサルタント植村 昭夫博士、医薬研発達人編集長高野 哲臣氏に深く感謝申し上げます。

前号までの記事は下記からご覧いただけます。
第54号: ASEANは中国のBiotech/Biopharmaにとって良い市場か?

第53号:中国のADC–10年の蓄積と3年の飛躍–
第52号:第15回DIA中国年会報告(第二弾)  医薬研発達人創刊2周年記念号

第51号:第15回DIA中国年会報告(第一弾)    中国バイオテク企業が日本へ進出するということ

第50号:呉洪福教授:中国は日本の幹細胞産業から何を学べるか

第49号:PhIRDA宋瑞霖執行会長ご講演聴講記

第48号:中国において抗悪性腫瘍薬の単群試験が適用となる6つのケース

第47号:2022 CBIICにて中国医薬品規制改革の成功の軌跡と今後の課題を見る

第46号:2023年度中国国家医療保険償還医薬品リスト(NRDL)交渉結果

第45号:第一三共の中国での野望

第44号:中国における中枢神経系医薬品の研究開発:果てしない闇を越えて

第43号:中国の伝統的なジェネリック医薬品企業はどのようにして創新薬創出企業に生まれ変わったのか?

第42号:王娜アステラス中国開発本部長:アステラスは中国を含む世界同時開発を一歩一歩実現させる

第41号:2022年の中国の製薬企業の導出・導入状況の分析

第40号:中国は「患者を中心とする」新薬臨床開発の時代を開く

第39号:医薬研発達人第39号:2023年新春挨拶

第38号:25th CSCO 2022-CDE Session報告

第37号:海南博鰲(ボアオ)楽城国際医療観光先行区における「中国市場先行参入」の道

第36号:中国における眼科領域新薬開発の現況

第35号:CDEが抗体薬物複合体(ADC)ガイドライン(案)を発出

第34号:DIA AsiaとDIA日本年会を通じて得られた中国に関する知見 

第33号:住友ファーマ中国 纐纈 義隆氏:中国での新たな挑戦

第32号:中国におけるリアルワールドデータの活用

第31号:中国における細胞及び遺伝子治療製品の審査概要と業界動向

第30号:中国における抗悪性腫瘍薬併用療法の開発トレンド

第29号:中国における医薬品の臨床試験中ならびに市販後の変更

第28号:張 剣教授:中国の若手研究者により多くの成長の機会を!

第27号:中国バイオのイノベーションを投資市場の視点から切る

第26号:医薬研発達人創刊1周年に寄せて (2022年7月4日発行、第26号)

第25号:2022年日中医薬健康交流会報告

第24号:CDE相談の現況

第23号:CDEのバイスペシフィック抗体医薬品ガイドラインがもたらすもの

第22号:中国製薬メタモルフォーゼ: BiotechからBiopharmaへ

第21号:中国における小児用医薬品開発の課題―現状を打破するにはー

第20号:2020年に登録された中国臨床試験の全体像から分かること

第19号:中国の製薬会社は、米FDAにおける信達生物製薬(Innovent)の経験から何を学ぶべきか?

第18号:中国の医療保険制度と薬価交渉の概観(下編)

第17号:中国の医療保険制度と薬価交渉の概観(上編)

第16号:中国の新しい希少疾病用医薬品臨床開発ガイドライン

第15号:2018~2021:過去4年間の創新薬の承認状況を振り返って

第14号:医薬研発達人第14号:新春挨拶

第13号:呉一龍教授:中国は世界の臨床研究において、重要な役割を果たしている

第12号:第6回中国医薬創新投資大会(CBIIC):導入(Buy)、フォロー(Follow)、改良(Improve)から真のイノベーションへ

第11号:CDE化薬臨床1部 楊志敏部長ご講演聴講記 (第18回DIA日本年会2021)

第10号:CDEが抗悪性腫瘍薬の臨床開発ガイドライン(案)を発出

第9号:2021年上半期の中国の製薬企業の導出・導入状況の分析

第8号:   中国GVP (Good Vigilance Practice) の公布・施行

第7号:  協和キリン丁 锎氏:日中両国臨床データ相互利用を強化する可能性

第6号:臨床的価値に焦点を当てる優先審査と特別審査 |上市促進プロセス(下)

第5号:中国の画期的治療薬、条件付き承認を多角的に分析|上市促進プロセス(上)

第4号:武田薬品の王  璘:中国の薬品研究開発:世界に追いつき、世界の研究開発をリードする

第3号:1回日中ICH合同シンポジウム:日中協働と相互理解の促進

第2号:NMPAはどのようにICH管理委員会メンバーに再選されたのか?

創刊号:医薬研発達人:日中両国のさらなる医薬発展への架け橋 |発刊にあたってのご挨拶

創刊号:なぜ、医薬研発達人を立ち上げたのか?|発刊にあたってのご挨拶

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第55

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