2024年にも予想される中国におけるDCTの本格導入
植村 昭夫
「医薬研発達人」共同創設者/編集部員
医薬品開発コンサルタント
日本における2024年は、驚愕の能登半島地震と羽田空港での航空機衝突炎上事件でその幕を開けた。2023年は世界各地の戦争による将来の不安定な政情に悩まされたが、今年はどのような年になるのだろうか?
医薬研発達人も足掛け4年目となり、2023年を振り返ると大変充実したトピックが提供できた年ではなかったかと思う。印象に残るニュースを挙げるならば、第40号の「患者を中心とする」諸規制の紹介、第46号の国家保険償還医薬品リスト、第51号の中国バイオテク企業の日本進出、第53号のADC薬の中国における開発の振り返り、などが思い出される。
とりわけ第51号の中国バイオテク企業の日本進出では、医薬研発達人編集部がPhIRDAと協力してバイオテク企業の開発活動実態を調査し、その結果に基づいた中国企業の日本への進出について中国DIAにおいてセッションを開催してその現状と将来について議論を主導した。医薬研発達人発刊以来の最大のイベントであり、成果も十分満足できるものであった。この企画はとてもタイムリーなものであり、筆者自身の観察でも(やや贔屓目が入っているかもしれないが)、これまで日本進出には大変消極的であった中国バイオテク企業が、今年の後半には徐々に日本に興味を向けるようになってきたように感じている。
このトレンド(変化)は、いろいろな要因に基づいていると思われるが、その中でも大きなドライバーは、中国企業の研究開発能力の増大による中国発医薬品の国際化と、日本側でのPMDA/MHLW規制の変化によるものが多いのではないだろうか。前者は本誌でも常々取り上げており、FDAによる中国発医薬品の承認などの例を見るに明らかであるが、後者は、最近報じられている日本の医薬品規制の緩和(e.g. Phase 1規制緩和、オーファン指定基準の弾力的運用等)が中国企業の日本へのアプローチを後押ししていることが伺われる。世界の創薬ソースが巨大企業からベンチャーなどの小型企業へ移行してゆくことにより、日本規制当局はより柔軟な規制対応を迫られており、中国発の医薬品の勢いが増してきている現在、まさにタイムリーな規制変化ではないかと思われる。
中国と日本を取り巻く医薬品の環境には、今年も例年に増していろいろなことが起こることが予想され、医薬研発達人の役割も今まで以上に重要であるとの思いを新たにしている。(植村 昭夫)
前号までの記事は下記からご覧いただけます。
第63号:なぜ香港は新たな医薬品医療機器規制当局を設立するとともに、ICHに参加するのか?
第62号:第7回『研発客』臨床年次総会兼ChinaTrials15速報:日本の新規制が中国製薬企業の日本進出に与える影響
第61号:DIA日本年会2023参加報告 ーChina Townhallを中心に
第60号:秦叔逵教授:「がんの王様-肝臓がん」の治療法の進展
第59号: 条件付き承認制度を厳格化する新たな規制案は中国の創薬企業に影響を与えるか?第58号: DIAアジア会議2023における中国の規制/業界関連のトピックス
第57号: CDE Annual Reports 2022を紐解く
第56号: 中国における自己免疫疾患治療薬の開発競争: 勝者は誰か?
第55号:CDEの『新薬のベネフィット•リスク評価』ならびに『患者を中心とする臨床試験のデザイン/実施とベネフィット•リスク評価』に関する技術ガイドライン
第54号: ASEANは中国のBiotech/Biopharmaにとって良い市場か?
第53号:中国のADC–10年の蓄積と3年の飛躍–
第52号:第15回DIA中国年会報告(第二弾) 医薬研発達人創刊2周年記念号
第51号:第15回DIA中国年会報告(第一弾) 中国バイオテク企業が日本へ進出するということ
第50号:呉洪福教授:中国は日本の幹細胞産業から何を学べるか
第48号:中国において抗悪性腫瘍薬の単群試験が適用となる6つのケース
第47号:2022 CBIICにて中国医薬品規制改革の成功の軌跡と今後の課題を見る
第46号:2023年度中国国家医療保険償還医薬品リスト(NRDL)交渉結果
第44号:中国における中枢神経系医薬品の研究開発:果てしない闇を越えて
第43号:中国の伝統的なジェネリック医薬品企業はどのようにして創新薬創出企業に生まれ変わったのか?
第42号:王娜アステラス中国開発本部長:アステラスは中国を含む世界同時開発を一歩一歩実現させる
第40号:中国は「患者を中心とする」新薬臨床開発の時代を開く
第39号:医薬研発達人第39号:2023年新春挨拶
第38号:25th CSCO 2022-CDE Session報告
第37号:海南博鰲(ボアオ)楽城国際医療観光先行区における「中国市場先行参入」の道
第35号:CDEが抗体薬物複合体(ADC)ガイドライン(案)を発出
第34号:DIA AsiaとDIA日本年会を通じて得られた中国に関する知見
第33号:住友ファーマ中国 纐纈 義隆氏:中国での新たな挑戦
第31号:中国における細胞及び遺伝子治療製品の審査概要と業界動向
第29号:中国における医薬品の臨床試験中ならびに市販後の変更
第28号:張 剣教授:中国の若手研究者により多くの成長の機会を!
第27号:中国バイオのイノベーションを投資市場の視点から切る
第26号:医薬研発達人創刊1周年に寄せて (2022年7月4日発行、第26号)
第23号:CDEのバイスペシフィック抗体医薬品ガイドラインがもたらすもの
第22号:中国製薬メタモルフォーゼ: BiotechからBiopharmaへ
第21号:中国における小児用医薬品開発の課題―現状を打破するにはー
第20号:2020年に登録された中国臨床試験の全体像から分かること
第19号:中国の製薬会社は、米FDAにおける信達生物製薬(Innovent)の経験から何を学ぶべきか?
第15号:2018~2021:過去4年間の創新薬の承認状況を振り返って
第13号:呉一龍教授:中国は世界の臨床研究において、重要な役割を果たしている
第12号:第6回中国医薬創新投資大会(CBIIC):導入(Buy)、フォロー(Follow)、改良(Improve)から真のイノベーションへ
第11号:CDE化薬臨床1部 楊志敏部長ご講演聴講記 (第18回DIA日本年会2021)
第10号:CDEが抗悪性腫瘍薬の臨床開発ガイドライン(案)を発出
第9号:2021年上半期の中国の製薬企業の導出・導入状況の分析
第8号: 中国GVP (Good Vigilance Practice) の公布・施行
第7号: 協和キリン丁 锎氏:日中両国臨床データ相互利用を強化する可能性
第6号:臨床的価値に焦点を当てる優先審査と特別審査 |上市促進プロセス(下)
第5号:中国の画期的治療薬、条件付き承認を多角的に分析|上市促進プロセス(上)
第4号:武田薬品の王 璘:中国の薬品研究開発:世界に追いつき、世界の研究開発をリードする
第3号:1回日中ICH合同シンポジウム:日中協働と相互理解の促進
第2号:NMPAはどのようにICH管理委員会メンバーに再選されたのか?
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第64号